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先端医療機器シンポジウム
30年前の国産「心臓」が頼み
人工臓器などの課題について意見をかわすパネリストら
人工臓器など先端医療機器の開発を後押しする「日本の技術をいのちのために委員会」(理事長=妙中義之国立循環器病センター研究所副所長)によるシンポジウムが2月28日、東京都内で開かれた。妙中理事長と土屋了介・国立がんセンター中央病院長が基調講演。パネル討論では、会場からも質問や意見が相次ぎ、参加者が一体となって克服すべき課題を探った。
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「30年近くも前の機種を使い続けるしかなく、これが日本の先端医療かと世界中の医者が驚いている」。拡張型心筋症の重症患者が装着して心臓移植を待つ補助人工心臓について、パネリストの松宮護郎・千葉大教授(心臓血管外科)は、こう述べた。
この病気は心臓が膨らみ、血液を送り出すポンプ機能が低下する難病。国内には約1万8000人の患者がいるが、国内で使える補助人工心臓は1980年代に開発され、90年に製造承認された国産機種だけだ。この機種は体外のポンプから心臓に入れた2本の管を介して血液を流すため、患者は常に細菌感染の危険にさらされるという。
国内では臓器移植が進まないため、移植を待つ入院期間は平均850日にも及ぶ。ポンプ本体を体内に埋め込む外国製機種なら感染リスクが低く、退院も可能だが、2001年に承認されたこの機種はすでに部品の製造が終了した。
別の外国製機種は未承認なので、30年前の国産機種を使うしかない。審査員が少ないため、厚生労働省の認可が遅いのも一因だ。
化学メーカーなどの意識調査では「医療機器に使うなら材料を供給したくない」という回答が6割を超えている。こんな調査結果を紹介した化学技術戦略推進機構の日吉和彦・部長研究員は、「万一の事故で社名が傷つくことを恐れるためだ」と述べ、意識改革の必要性を主張した。他のパネリストからも「ゼロリスクを求めるより、機器によってどれだけの人が救われるかを考えるべきだ」といった意見が相次いだ。
会場からは「人工臓器などが発達すると、医療費の負担も増大するのでは」という質問も。これに対し、梅津光生・早稲田大先端生命医科学センター長は「(臨床試験で)埋め込み型の人工心臓を装着した患者が退院して医療費が100分の1になり、働いて納税できるようになった人もいる」と述べ、理解を求めた。
妙中義之・国立循環器病センター研究所副所長
◆開発に消極的な国内企業
日本には優れた技術があるのに、医療機器の国際競争力は低く、特に人工臓器などの治療用機器は遅れている。この状況を打開し、患者の命を救いたい。
国は2008年に「新医療機器・医療技術産業ビジョン」を策定し、先端医療技術の創出に向けた支援策を打ち出した。いろいろな業種の技術を生かした新しい機器も誕生している。
例えば、新型インフルエンザの重症患者の治療に役だったものとして人工肺がある。この機種は、半導体の製造に欠かせない超純水を作るガス交換装置を応用したものだ。発電所のタービン技術を生かして、体内に埋め込んで使用できる超小型の補助人工心臓も国内企業が開発している。
しかし国内企業の多くは、新技術の開発や公表に消極的だ。不具合が起きた時の訴訟や風評被害などのリスクを避けたいからだろう。環境問題に取り組む企業のように、医療機器を世の中に出す企業は社会に貢献している、と評価されることが大切だ。
米国やドイツでは大学病院や工学系研究機関、ベンチャー企業、サービス産業などが集まった医療都市づくりに成功している。日本でも実現させたい。
土屋了介・国立がんセンター中央病院長
◆臨床研究者育て認可促進
国内企業が医療機器開発に踏み出さない要因には、欧米に比べ、厚生労働省の認可が下りるまでに時間がかかる「デバイスラグ」(医療機器の時間差)の問題がある。国内の臨床研究体制に課題があって十分なデータを出せないから、認可が遅くなる。
医学研究で、日本の基礎分野の論文数は米国、ドイツに次いで第3位なのに、臨床分野は18位。臨床研究を本格的に進めるには人材を幅広くそろえた体制づくりが必要だが、現実は経理事務も医局員が片手間でやっている。米国ではトラクターで畑を耕しているのに、日本ではスコップを使っているようなものだ。
研究拠点を厳選して整備し、臨床研究者を育成するシステムの構築を提案したい。地域ごとに総合病院や研究所、医療関連企業などが集積する「医療クラスター」を作れば、機器の開発や臨床試験が迅速に進み、患者の受け入れも24時間可能になる。
東京なら、国立がんセンターの目の前に築地市場がある。都の市場移転構想の進み方次第では、跡地と東京五輪予定地だった晴海を活用できる。3000床規模の病院を作り、関連メーカーを集めてはどうか。

